マシオン恵美香と申します。
外国人の夫と、この春、高校を卒業する娘の三人で、
福島原発からは683.4km、泊原発からは316.5㎞ 離れた釧路市に暮らしています。
どちらの原発からも遠いように聞こえますが、私は風下住民である自覚を持っています。
職業は画家で美術講師です。保育福祉専門学校で美術専任講師を務め、
自宅アトリエで子ども絵画教室と植物細密画講座を主宰しています。
昨年の東日本大震災後は釧路で被災者支援活動の事務局を務めております。
私が本訴訟の原告となった理由、原子力発電所の稼働に反対する理由を大きくは3つに分けて申し述べます。
消費者として
結果として高い電気料金を押し付けられる原発に反対です。現在の試算では北海道の電力には十分な余剰があり、更に夜間電力を考慮すれば原発を稼働させる必要は全くありません。また、国が試算した長期エネルギー需給見通しは、途中、下方修正をされたほどなのに、なぜ泊原発の稼働計画だけを、そのまま残したのでしょうか?
原発が国策であるとして廃棄物の管理や、老朽した後の廃炉のコストを税金でまかなうのだとしたら、電気料金の二重取りをされている印象を持ちます。廃棄物の処理費用を算入しない発電コストの試算方法は、他の発電方法と公平に比較することができませんが、それだけに、結果として安くはないのだろうと予測できる電力を買うしかない立場の消費者としては、認可した国の判断が間違っていたと指摘しなければなりません。
また、電力会社は公益企業として有益なサービスを提供するべきなのであって、放射能のように危険な毒物を他人の所有する土地に勝手にふり撒いておいて、「無主物だから、作ったり放出した事業者にも誰にも責任がない」などという、かつて聴いたこともないほど無理矢理な論理で責任逃れをするような身勝手な了見が許されていいはずがありません。私は消費者として、泊原発の存在理由そのものについて検証するべきと申し上げます。
核の被害者として
私は被爆二世です。私の父は長崎で被爆しました。若くして癌を発症し、再発と転移の末、最終的には白血病で、ちょうど10年前、70歳になったばかりで亡くなりました。そして、3年前、私は父よりも更に10年も若くして悪性進行癌を宣告され、胃と胆嚢を全摘出する大きな手術を経験しました。父の被曝や深刻な病気の発症と私の病歴との因果関係はわかりません。しかし、こんな私だからこそ、はっきりと言えることがあります。あんなに辛かった術後の痛みや、その後の体の不具合を、幼い子ども達に強いるなんて、惨過ぎます。子ども達にはとても耐えられないでしょう。
ヒロシマやナガサキのヒバクシャを通じ、内部被曝や低線量被曝による晩発性障害や発癌との因果関係について、歴史から学ぶべきと放射線の研究者達が箴言しています。チェルノブイリ事故の後、ベラルーシでは25年の間に出生率が激減しています。死産、流産、不妊によって、目の前に在る命だけでなく、生まれてくるはずの命たちの未来の可能性さえ切りつけてしまうかもしれない放射能、そして、それを製造する原発は核兵器となんら変わりなく私達を脅かしています。私は被爆二世として、癌患者として、すでに福島原発から放出された放射能の影響を受け続けている核の被害者として、国や世界に向かって「原発を一基のこらず止めて」と訴えます。
命として
原発の問題はエネルギーや経済の問題でもなく、命の問題です。
私が泊原発を止めて欲しいと訴える最大の理由は、母親として、たった一人の私の愛する娘の未来が病によって翳ることが無いよう願うからです。娘が、いつか愛する人と巡り合い、その人生の持てる時間を健やかに生き、願わくば孫をこの手に抱くことが出来たら更に嬉しいと思う、人として命として、平凡すぎる願いを絶たれたくないからです。そうでなくても福島原発の事故後は水や食べ物によって、風が運んでくる空気の中にさえ塵や埃に混じって、大量の放射能が日本の国土を広く汚染し、命たちを脅かし続けているのです。
先日、被災地からの自主避難者に言われました。「原発が何もかもを奪う、どれほど危険なものか、その代償の大きさを見たでしょう? 逃げてきた先にも原発があって、とてもショックだった。泊原発はなんとしても道民が協力して止めて欲しい。」と言われました。そして、移住者達と私達の未来を養うために、食糧基地として200%もの自給率を誇る北海道の一次産業を守るためにも、泊原発に何かあっては困ります。
放射能は、命の順番を狂わせるものです。細胞分裂が激しい若い命ほどその影響を受けるというのですから。親が子どもの葬式をすることが普通になってしまうような悲しい未来は見たくありません。また、私は、電力を使わない北海道の自然の中に在る植物や虫や鳥や動物達の命に申し訳がないのです。
命たちの代弁者として訴えます。現在動いている泊原発3号機をたった今、すぐに止めること、そして、すでに止まっている1.2号機を二度と再び動かさないで!と。残りの私の人生の総ての時間を捧げても、命たちにとって原発の無い暮らしと未来を勝ち取りたい・・・
私は、そのために原告になりました。
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Shut泊 事務局/代表 泉かおり
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