2012年3月22日木曜日

瓦礫広域処理問題の「本当の理由」

がれき広域処理問題の「本当の理由」-隠された意図と目的は何か?-(4)

                   かわはらしげお(原発出前授業)

○がれき広域処理の「本当の理由」(2)
 国が、被災地の「がれき」の20%を、全国の自治体に引き受けさせるという広域処
理のために、9億円ものお金を使って「復興支援のために」とキャンペーンまでやっ
て強行しようとしている「本当の理由」は、「がれきマネー(利権)」だけではあり
ません。もうひとつの「本当の理由」は、「放射能を薄めて日本全国に拡散」して、
いま日本全体に広がっている「放射能への不安・放射能アレルギー」を薄めようとす
ることではないのかと思われます。
 被災地の「がれき」は、たとえ100bq/kg以下であっても、まったく放射能に汚染さ
れていないというものではありません。そのような「がれき」を、全国の自治体に引
き受けさせることによって、「ごく低レベルに放射能汚染されているがれき」なら
ば、日本全国どこで引き受けても大丈夫という社会心理的な効果をもたらすことを目
指しているのではないでしょうか。
 時も時、北海道教育委員会は、文科省が作成し発行した副読本「放射能について考
えてみよう」を、全道の小・中・高校の全児童・生徒分を印刷して、学校に送付して
きました。この副読本については、別にその問題点を指摘した文を書きましたが、そ
の内容の基本的な主旨は「放射能はどこにでもあります。放射能はいろいろと活用さ
れています」ということ、「100msv以下ならがんになるという確証はありません」と
いうことで、放射能の無害性・有用性・安全性の強調です。これは3・11以前に流
布されていた「原発安全神話」に代わる、「放射能安全神話」を広めようとするプロ
パガンダのための文書だと思います。いま国が行っている「がれき受け入れキャン
ペーン」もまた、この文科省の副読本と同様に、「低線量で被ばくしたがれき」なら
ば、日本全国どこで引き受けても「安全・安心」だということを強調するためのプロ
パガンダなのではないでしょうか。
 さらにうがった見方をするならば、この「がれき広域処理」の本当の意図と目的に
は、次のステップがあるように思われます。それは、いま福島に山積みになっている
「低レベル放射性廃棄物」と、日本全国の原子力発電所の中にある「使用済み核燃料
(高レベル放射性廃棄物)」を、いずれ日本全国の自治体に分散して引き受けさせよ
うという意図と目的です。
 国はいま福島原発とその周辺に溜まっている「放射性廃棄物」について、これを福
島県の原発周辺自治体に30年間「中間貯蔵」させてもらおうとしています。自治体
側はこれを引き受けると、そのまま「永久貯蔵」になりかねないと慎重な姿勢です
が、国側はこれに対して30年後には必ず県外に出すことを法制化するということを
言い出しています。そうなると、30年後には今の「がれき問題」と同じ構図が、
「原発が出した放射性廃棄物を日本全国で分かち合おう!」というかたちで、再現さ
れるのではないでしょうか。すでに馬淵元国交相が民主党内で立ち上げた「原子力
バックエンド問題勉強会」の一次提言には将来的に「46都道府県に使用済み核燃料
を分散して保管する」という案が検討されているというのです。

○がれき広域処理問題は「心情的」でなく、「理性的」に論議・判断を!
 以上見てきたように、がれき広域処理の問題の「本当の理由」のひとつは、被災地
の「復興支援」を進めるというよりは、復興予算による「がれきマネー(利権)」を
被災地以外の自治体に回していくこと、そしてもうひとつの理由は「放射能を薄めて
日本全国に拡散」していき、いま日本全体に広がっている「放射能への不安・放射能
アレルギー」を薄めようとすることではないのかと思われます。そして、将来的に
は、その処分が問題となる「原発が出す放射性廃棄物」について、いすれこれを日本
全国の自治体に分散して引き受けさせようとする「隠された意図と目的」があるよう
に思われます。しかし、このような「本当の理由・意図と目的」を隠しながら、国は
何億円ものお金をかけて、「がれき引き受けで復興支援を!」という「心情的」な
キャンペーンを繰り広げています。
 北海道では、すでに高橋知事が「がれき」の受け入れ表明しており、また道内のい
くつかの自治体が「がれき」の受け入れに前向きの意向を表明しています。奥尻町や
浦河町などは、かつての震災の時に全国から支援を頂いたので、「恩返し」として、
「がれき引き受け」の意向を表明しました。しかし、一方で道内でも多くの自治体が
「放射能」や「風評被害」への不安から、受け入れを拒否したり、慎重な姿勢を取っ
ています。特に札幌市は、「安全性が確認できないものは受け入れられない」とし
て、国から要請が来ても拒否する姿勢を明確にしています。上田市長は7日の記者会
見で、「焼却灰」の8000bq/kgの国の基準について「合理的な理由」が示されておら
ず、「広域処理のための政治的な決定」と批判し、さらに「実際にがれき全部を測定
できないため、完全に放射性物質を含まないと証明するのは難しい」として、事実上
がれき受け入れをしない意向を表明しています。このような札幌市や市長の姿勢に対
して、「思いやりがない」とか「冷たい」という批判もあるようですが、このような
重要な問題に対して、「心情的」に流されることなく、きわめて冷静で「理性的」な
判断をしていると思います。
 今回の震災によって引き起こされた原発事故によって、ほぼ日本全土が放射能に
よって汚染されてしまいました。しかし、北海道は幸いに原発からの距離が比較的遠
かったために、それほど高濃度に汚染されてはいないと言われています。そのような
北海道に、あえて放射能に汚染された可能性のある「がれき」を受け入れることは、
道民に不安を与えるだけでなく、北海道の農産物や海産物への風評被害や、道外や海
外からの観光客へのイメージへの影響も考えられます。「がれき引き受け」だけが被
災地への復興支援ではありません。北海道だからできる支援のあり方を考えていくべ
きでしょう。
 わたしたちは、国の「復興支援のために」という「心情的」なキャンペーンに惑わ
されることなく、正確な情報と事実に基づいて、冷静に、そして「理性的」に論議を
重ねていくことで、この「がれき広域処理」の問題についての、しっかりとした判断
を下すべきではないでしょうか。(前半部分については添付文書をお読み下さい)





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