2012年4月3日火曜日

瓦礫の広域処理の問題点を認識し、北海道独自の
被災地支援ビジョン策定を求める要請書
北海道知事 高橋はるみ 様
瓦礫の広域処理には、被曝リスクという点からも、被災者支援という人道上の理由からも、道政の未来を考える上からも、根本的な問題があります。北海道民が現在および将来的にも、健康で安全かつ快適な生活を送れるよう、知事には国の決定を待つのではなく、北海道民を守るための道民の代表としての知事としての主張を、しっかり表明していただけるよう強く望みます。また、被災地復興については、北海道だからこそ可能な貢献ができるよう、以下の二点を要請いたします。
要請
1. 北海道道知事による北海道への「瓦礫の受け入れ表明」については、瓦礫の安全性が確保できないため、撤回してください。
2. 被災地支援については、避難者の受け入れの継続など、北海道だからこそ可能な方策を検討してください。
理由
(1)瓦礫は産業廃棄物、化学物質や重金属が含まれている瓦礫は、一般焼却所で対応できない。
震災によって生じた瓦礫には、アスベスト、ヒ素、六価クロム、PCBなどの、特別管理産業廃棄物、化学物質、重金属が含まれており、これらは完全に分別できません。一般の焼却炉は、産業廃棄物の処理に対応していません。
(2)災害廃棄物は、化学物質や放射性物質が多く含まれるまれるため、一般廃棄物としての焼却埋め立て処理で対応できない。
焼却所のバグフィルターは、放射性廃棄物の焼却に対応していません。放射性セシウムは、焼却されると気化して拡散するか灰に濃縮されて、作業員や住民の被曝をもたらします。また、焼却炉は放射性廃棄物に汚染されるので、フィルター交換時や解体時には、飛散防止対策を講じなければならなくなります。さらに、放射性セシウムは水に溶出しやすいため、それを含む灰を埋立すると、汚染が進む可能性があります。特に、問題とされているバグフィルターは多種多様な種類があり、それぞれの施設において、実証実験が必要な状態です。また基本的に気体状(気体分子)のものは濾過できません。また2μmという比較的大きな粒子(バクテリアの平均粒径の2倍程度)でも、未使用のバグフィルターでは50%程度しか除去できません。焼却炉については、排ガス中の重金属については、排出規制が一切ありません。
(3)放射能汚染検査には不備があり、安全性を確保できない。
現状の放射能汚染検査はγ線核種のみが対象で、毒性の高い放射性プルトニウム、ストロンチウムなど、α線核種とβ線核種の測定は、ほとんどなされていません。γ線核種も、検出下限値の切り上げや測定時間短縮によって、不検出になりえます。しかも、瓦礫の汚染調査はサンプル調査であり、実際の汚染度より低く試算される可能性があります。
安全性アピールのパフォーマンスとして、瓦礫に空間線量計をかざし、上昇が見られないと主張されることがありますが、瓦礫の汚染度は空間線量計では測定できません。
(4)原子力規制法と矛盾する、ダブルスタンダード(二重基準)の問題がある。
原子力規制法では、原子力施設内における放射性廃棄物の処置として、放射性セシウム100ベクレル/Kgをクリアランスレベルと定めていますが、瓦礫の広域処理について、環境省は焼却灰の埋め立て基準を、放射性セシウム8000ベクレル/Kg以下に引き上げました。これは、明らかに原子力規制法と矛盾します。
(5)瓦礫の広域処理は国費から賄われ、被災者支援予算を圧迫する。
がれきの処理経費は、宮城県・岩手県だけで1兆700億円という産経新聞の報道があった。同記事には阪神淡路大震災ではトン当たり2万2千円。今回はトン当たり5万円から6万円という予算立てになっていると記載されている。今回、福島県を含めて3県のがれきの総量は、約2400万トンである。阪神・淡路大震災時の処理経費(トン2万円)で計算すると、福島を含めても約5000億円前後の予算です。岩手県岩泉町の伊達勝身町長が主張するように、安全な瓦礫なら現地に仮設焼却炉を作るほうが経済的で、雇用の面から復興に役立ちます。一方、危険な瓦礫なら、コンクリートで封じ込めるなどの対処法を考えるべきで、遠方に運搬して汚染を拡大するべきではありません。広域処理には膨大な輸送費や処理費がかかり、すべて国費からまかなわれます。それらの費用は被災地に直接まわすほうが、より有効な支援になります。
(6)広域処理が進まないことは、瓦礫処分の遅れの主な原因ではない。
震災から1年弱経過した今年2月でがれき処理の実施率が5~6%であることを環境省も発表しています。地元での処理が遅れた原因のひとつに、全国・広域化を想定して計画・予算化したことがあると考えられます。国が全国化・広域化の方針を掲げているために、地元でのがれき処理を進められなかったのが現実ではないでしょうか。広域処理に回される瓦礫は、政府計画でも瓦礫総量の20%にすぎません。つまり、仮に広域処理が半分進んでも、処理率は10%上がるにすぎません。
(7)広域処理は憲法・地方自治法違反である。
広域処理の地方自治体への強制は、地方自治の本旨をうたう憲法に反し、団体自治と住民自治という原則を定めた地方自治法に反します。
(8)広域処理は、国際合意に反する。
放射性物質を含む廃棄物は、国際合意に基づいて管理すべきであり、IAEAの基本原則でいえば、拡散を防止して集中管理をするべきです。放射性廃棄物を焼却すると、気化した放射性物質は気流にのり、国境を越えて汚染が広がります。広域処理を進めるなら、日本は地球規模の環境汚染の責任を負うことになります。
(9)広域処理は、道義的に反する。
福島原発事故によって発生した放射性廃棄物は、すべて第一義的な責任者である東電が引き取るべきものです。特措法は東京電力に誠意ある処置を義務付けており安易に放射性物質を含む瓦礫を引き受けることは、東京電力の責任の所在を曖昧にすることになります。
また、放射性廃棄物を今後も北海道が受け入れる前例となりかねません。
(10)北海道だからこそ可能な、被災地支援の可能性がある。
北海道は放射性物質の降下が少ない、日本でも有数の清浄な土地です。北海道は、放射能フリーの北海道農産物の増産、保養地の整備、避難者の受け入れなどを通して、被災地復興を支えることができます。
(11)瓦礫の受け入れは、北海道民重視の政策とはいえない。
広域処理は、道内の産廃業者にある程度の利益をもたらしますが、一般県民はリスクと不安を背負い込むだけで、ほぼ何も利益がありません。瓦礫受け入れは北海道のイメージダウンにつながり、観光業、北海道産農産物の需要も、減じることでしょう。国の責任で風評被害が出た場合の保障の話も出ていますが、これに関する基準や保障範囲については何ら具体的な指針が出されておりません。
(12)瓦礫焼却には、作業員や住民の健康および環境に膨大なリスクが伴う。
瓦礫焼却で事故が起きたときの被害は甚大です。作業員や周辺住民の健康および環境への影響にも大きなリスクがあります。
質問
①今回の災害廃棄物の放射能汚染の原因をつくった東京電力の処理責任について、どのような見解をお持ちですか?
放射能汚染された災害廃棄物の処理処分については、第一義的には東京電力に用地の確保や必要な処理施設の整備及び経費負担を求めるべきです。本来であれば、放射能汚染された災害廃棄物の処理処分の責任は、第一義的に東京電力に課すべきです。現行のように国及び自治体が処理処分を肩代わりして行う場合、万が一、北海道の環境汚染や道民への健康被害の発生が生じた場合には、道として東京電力が責任を取ることを求めて行く準備があるのか、具体的にどのような形で責任を取ってもらうつもりなのか、説明してください。
広域処理から外した福島県は、放射能汚染を考えて外したと聞いています。しかし、岩手県、宮城の放射能汚染についても牛肉・稲わら汚染、文科省の放射線地図、両県下の市町村のごみ焼却炉の焼却灰の汚染度の測定によって判明しています。両県の広域化を見直さなかった理由と、長く露天に置かれた両県のがれきについて放射能汚染調査を行ったかどうかについて、国からの説明は受けているのでしょうか? もし、未だこの件に関して説明を受けていないのであれば、国に確認を取ってください。
放射性物質を含んだ災害廃棄物の処理処分は、国際的な観点からも他の廃棄物と混合希釈することなく、発生現地での保管管理を原則とすべきです。この方針を貫徹するために、国がこれまでどのような対策を講じてきたか、そして北海道に持ち込んだ場合どのように対策を講じるのか、説明してください。広域処理の対象物について、「放射性セシウム濃度が不検出または低く、岩手県と宮城県の沿岸部の安全性が確認されたものに限ります。」としています。また、知事におかれましては放射性セシウム100bq/kgに設定されていますが、それ以外の核種の分析による濃度の確認及び採取物による濃度のばらつきについて、どのような対策が講じられているか、説明してください。
災害廃棄物の種類・性状によっては、被災地における地盤のかさ上げやセメント化による堤防等コンクリート構造物への利用などが検討されていると思いますが、広域処理のケースと現地処理若しくは再利用等の活用を図るケースとのコストパフォーマンスを含めた比較検討を行っていのでしょうか?広域処理に要する経費の算出根拠と積算結果を公表してください。
国は、既存の焼却施設でダイオキシン対策等のために高性能の排ガス処理装置(バグフィルター等)が備わっておれば、放射性セシウムをほぼ100%除去できるとしています。北海道へのがれき受け入れを表明された道知事も同意見であると考えますが、除去率の根拠と具体的な数値(処理装置の前後の濃度と除去率)を示し、また、現行の排ガス採取方法の妥当性と定量下限値の設定について、どのような検討を行ってきたのかご説明ください。また、環境省は、電気集塵機のみの焼却施設でも処理を可能としていますが、その妥当性について、道としてはどのように考えられているのかご説明ください。
⑥「指定基準の8,000ベクレル/kg以下の廃棄物に関しては、放射性物質に汚染されていない廃棄物と同じ方法又はほとんど変わらない方法で安全に分別、焼却、埋立処分等の処理を行うことが可能である」としていますが、実際には既存の焼却施設で、バグフィルターの破損や不具合等の発生事例が多く報告されています。バグフィルターの性能評価、故障時の排ガス中のガス成分(重金属類、ダイオキシン類等、芳香族炭化水素類等)の測定例を示してください。また、焼却後の焼却灰において、重金属などの数値が埋め立ての際の溶出基準に適応しているのかの測定例を示してください。
⑦「放射性セシウム8,000ベクレル/kg以下の廃棄物を追加的な措置なく管理型処分
で埋立実施することについて、既存の国際的な方法論と完全に整合性がとれている。」としていますが、その理由を説明してください。また、実際には既存の管理型処分場で、遮水工の破損や汚水漏れ検知装置の不具合、防災調整池やダム堰堤の亀裂・倒壊などの発生によって、廃棄物の場外への流出や汚染された浸出水の地下への浸透などの不具合事例が各所で発生していますが、このような事例について把握されているものを公表してください。
⑧千葉県市原市内にある市原エコセメント㈱の工場から、1,000ベクレル/kgを超える放射性セシウムが検出された事例や、群馬県伊勢崎市の一般廃棄物最終処分場の排出水中から、放射セシウムが排水基準を超えていることが判明した事例、また現在、災害廃棄物を受け入れて焼却処理を行っている静岡県島田市の最終処分場の浸出水処理施設から、放流水の沈殿汚泥中から300ベクレル/kgという高濃度の放射性セシウムが検出された事例など、現に環境汚染をもたらしている事例があることについて、どのような対応を講じているか、ご説明ください。
⑨中部電力㈱は、「東日本震災がれきを石炭火力発電所で焼却処理することはできないのでしょうか?」との問い合わせに対して、中部電力㈱火力部は、以下のような理由から困難であるとの回答を寄せています。
ア)微粉炭ボイラは、非常に細かく砕いた状態でボイラに燃料を投入しています。瓦礫は異物や塩分等を含んでいることが懸念され、微粉炭の損傷やボイラ炉内腐食等の設備不具合が懸念されます。
イ)建設廃材におけるCCA処理剤(シロアリ対策としてのクロム鋼ヒ素系木材保存剤)等防腐剤や接着剤等の化学物質が含まれるため、設備への影響や石炭灰の有効利用に支障が生じる恐れがあります。
ウ)電力需給が厳しい中、信頼度を落とすことは避けたいです。また机上ベースの検討・評価に加え、実証試験を行った上でないと使用することは難しいです。
 
以上の回答は、自治体の焼却施設についても当てはまることではないでしょうか?
⑩環境省及び原子力安全委員会では、指定基準の8,000ベクレル/kgを決めるに際して、一般住民及び作業に従事する作業者の年間被ばく線量について、総被ばく線量ではなく、「処理に伴って受ける被ばく線量」を1mSv/年を超えないことと定めました。この理由について、根拠を含めて道としての見解を示してください。
⑪100ベクレル/kgを定めた原子炉等規制法と8,000ベクレル/kgを定めた放射性物質汚染対処特別措置法(以下「特措法」と略す)との関係はどのようになるのか、説明してください。特措法第20条に定める特定廃棄物の処理の基準及び特措法第23条に定める一般特定廃棄物等の処理の基準について、環境省令は具体的にいつ定める予定か、道は説明を受けているのでしょうか?瓦礫処理にあたって、道としては廃棄物処理法以外の土壌汚染対策法や水質汚濁防止法等廃棄物処理法以外の環境法制と特措法との関連について、今後どのような取扱いをされる予定か、説明してください。
4月9日までに、上記の質問下記の連絡先まで文書で回答をいただくようお願い致します。また、回答の内容に関して直接説明を受け、質疑応答を行いたいと思いますので、そのための場の設定をお願い申し上げます。こちらからの参加者は20人から30人ほどを予定しております。
2012年4月2日
クリーン北海道
ベクレルフリー・北海道
Shut
脱原発!子どもたちを放射能から守る・江別実行委員会
原発なしで暮らしたい室蘭市民ネット
核廃棄物施設誘致に反対する道北連絡協議会
震災瓦礫を考える市民ネット(苫小牧)
脱原発カフェ・小樽
(連絡先 TEL: 09026951937 FAX: 011-826-3796)


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